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黍殻避難小屋で一晩を過ごす (2015)
2015/12/18〜19


黍殻避難小屋


 12月18日() 

 2016年の山登りも終盤を迎え、あと2回だけとなった。今回は、丹沢山系黍殻山にある「黍殻避難小屋」が2014年春に建て替えられ、きれいになったとの話を伺って、ものは試しと訪れることにした。しかし、ただ避難小屋に行って酒を飲むだけでは芸がないと、焼山〜蛭ヶ岳〜丹沢山〜塔ノ岳と繋ぎ噂の大倉尾根を下りることにした。

 丹沢に行くときは新宿駅で乗り換えなければならない。平日の通勤時間帯にJRの残酷列車にザックを持って乗るのは、命を懸けた所業である。大混雑の新宿駅でJRから京王電鉄に乗り換えるというのはさらに恥を知らないということに等しい。橋本駅近くになってどうにか空いた電車でホッとし、駅そばを食べてから三ヶ木行のバスでようやく安心して座ることができた。三ヶ木から東野行のバスはのどかで、乗客も少ない。もちろん登山者は他にいない。計画では西野々のバス停まで行くつもりだったが、初めてのところなので焼山登山口で素直に下りる。

 バス停を下りると登山口は少し先に歩いたところにあった。林道に入ると、道路に落ちた木の葉を清掃していたご婦人に「天気はいいようですが、寒いから気を付けていってらっしゃい。」と声を掛けていただく。林道をさらに歩いていくと稜線への取り付き口があって、「ヒルに注意」との看板が立てられている。そう、これが私をして丹沢を忌避させる理由なのだった。ただその時期は11月までと書かれているから安心して植林帯を登る。

 すると、ほどなくして前方から汗びっしょりで下ってくる人がいる。
  「こんな時間に下りてくるなんて早いですね。」
  「大倉尾根を登ってみやま山荘で1泊し、昨晩は黍殻避難小屋に泊って下りてきました。」
  「避難小屋はどうでしたか。」
  「おじさんが3人いました。」
  「・・・・(ノーコメント)。」
 小屋滞在中のトピックが「おじさん」だったようで、その内容は聞かなかったが、ネガティブな印象のように感じた。

 今日の行程は、焼山登山口(290m)〜焼山(1060m)〜黍殻避難小屋(黍殻山1279m)までの3時間ほどの行程なので気楽だし、標高も急に上げなければならないわけではないが、標高差は約1000mもあることからなかなかのものである。途中、6人の日帰りの人たち、単独のおじさん×2、ご夫婦に出会った。さすが丹沢!その後は、出会う人もなく味もそっけもない焼山でお腹を満たし、次の関心事である水場を目指して歩く。

 今日は、黍殻山の水場の水を当てにはしていたが、それで用心してプラティパスに1.8リットルのほかテルモスとポカリの小を持ってきた。黍殻山を巻いてそろそろ稜線の道と合わさるというところに水場標識があった。標識の指し示す方向は谷へと向かっていて、2〜30m下りると水が湧き出ていた。ここで2リットルの水を汲む。

 大平分岐標識のすぐ先に、「黍殻避難小屋 350m」の標識があった。小屋は稜線から少し下りた草っぱらの端っこに建てられていた。第一印象は「う〜〜ん、これかぁ」だった。ログハウスをイメージしていたが、プレハブのような作りの屋根もない小屋とは・・・。「まいったなぁ」、でもお世話にならなければならない。

 外見とは違って、小屋の内部はなかなかいける。きれいに掃除もされている。ゴミも捨てられていない。それに誰もいない。エアーマットを備え付けの椅子に敷いて腰かけ、テーブルに贅沢三昧なつまみ(中国産のピーナツなど)でビールを飲み、日本酒を飲んでいると、外で物音がして単独氏が到着した。あれこれ山の話などをしているうちに夜も更けてきたのでシュラフに入って寝ることにした。あれほど寒かったのにシュラフの足元にダウンを突っ込み、ネックウォーマーで首周りを保温するとじきに温かくなって熟睡してしまった。

 黍殻避難小屋メモ
 1 水場:小屋から焼山方向に戻ること500mほど
 2 トイレ:和式・夏場は雨水で洗浄
 3 小屋の備品:座敷箒・庭箒・ちり取り。なお、えもん掛け数本は個人は置いていったもの(?)
 4 宿泊可能人数:詰めて10人?

 黍殻避難小屋での携帯電話
 焼山から登ってきて小屋が見えると、小屋に下りる最初の木道がある。その木道を下りずに稜線を進むと、右側に道志の里が見える。ドコモの携帯電話でメールが通じる。電波が立ったり立たなかったりしていたが、なんとか通じた。通話は確かめていない。

 黍殻避難小屋のトイレに関する特記事項
 「トイレ後の紙は便槽に落とすな」、つまり自分で持ち帰れと、小屋と便所に書いてある。
 しかるに、翌朝用を足したら落ちていかなかった。便器の滑りが悪いのかと思い貴重な水を使って流すことを試みたがだめだった。便槽の中が見えないように覆っているゴムの筒にティッシュペーパーやトイレットペーパーが絡みついていて、細くて上品なウンコだけがウンよく狭い隙間を通って下に落ちているようだったので、苦心惨憺すると障害は除去された。
 トイレットペーパーなどを便槽に落とすなという理由は、ウンコを分解するバクテリアの働きを弱めるからと書いてあったが、ゴムの切れ込みにティッシュなどが絡まって、今回のようなことにもなり得るのだから、この種の注意事項は愚直に守りたいものだ。今どき、自分のケツを拭いた紙を持ち帰らないなんということは、非文明人の行いだと言われている。
 なお、バイオ菌を定期的に投入している酉谷山避難小屋のトイレに、目○山岳会のメンバーが、前日に作り過ぎて余った鍋の残り物を捨てようとしていたので止めさせたことがあるが、とんでもない話である。もっとトイレというものを尊重し、大事に使用してはどうだろうか。なお、このトイレには、トイレ掃除用の箒(ほうき)やチリトリが置かれていない。


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